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「なんだつて、脳溢血?――そいつあ大変だねえ」
又走り出して、草の中に鼻を突つこんだ。が、今度はすぐもどつて来た。房一は緊張した表情をつくつて、その背をつかんでぐつと押した。
次に記すのは、ほんとうの怪談らしい話である。
「畜生、おぼえていろ。」
「そんなことができるもんかねえ」
「もう遅いんですよ、おぢいさん。泊つてつたらどうです」
と、小谷が徳次の足に目をつけて云つた。どこで手に入れたのか、徳次は白い紙緒の藁草履をちやんとはいていた。
「あゝ、よからう。大賛成ですよ」
房一が道平を送つて行くことになつた。
「それからね」
どこかで、「営林署だ」といふ声が聞えた。そして、黒い人影は左手へ向けてぞろぞろと走つて行つた。何か叫び声のやうなものがその方で起つていた。
「もはやお膳も据ゑていたゞきましたし、これで十分頂戴いたしたも同然でありますから、甚だ失礼ながらお先きに御免を蒙ります」
「うん、ドイツ兵の捕虜だ」